大田原キャンパス

学科トピックス

「医療福祉の学びと仕事」をテーマにパネルディスカッションを開催しました(福島県郡山市)

2020.07.15

大田原キャンパス医療福祉学部は7月11日、福島県郡山市で「医療福祉の学びと仕事」をテーマにパネルディスカッションを開催しました。その模様を採録します。


―― 本日の司会進行を務めます滝澤雅美です。本学卒業生で国際医療福祉大学病院勤務を経て現在、医療福祉・マネジメント学科講師をしております。パネリストのお一人目は学科長の小林雅彦先生です。小林学科長は行政経験豊富な地域福祉の専門家であり、学科では福祉系の3つのコースを主に関わられています。続いて、お二人目は副学科長の山本康弘先生です。山本副学科長は医療経営がご専門であり、学科ではマネジメント系の2つのコースを主に関わられています。そして、本日は、在校生と卒業生にもお越しいただいております。在校生は鈴木愛可さんです。鈴木さんは精神保健福祉コースの4年生です。よろしくお願いいたします。卒業生は、前田志帆さんです。前田さんは国際医療福祉大学を2020年3月に卒業し、現在は白河厚生総合病院に勤務されています。よろしくお願いいたします。
最初に、医療福祉・マネジメント学科の学びについて小林学科長にお伺いします。福祉系の3コースのそれぞれの学びの特長、ダブルライセンスをめざすカリキュラムについて、教えてください。

小林学科長 3コースの学びは、それぞれ介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士をめざして講義や実技、施設や病院等での実習があります。本学の特長であるダブルライセンスをめざす場合、介護福祉士と社会福祉士をめざす場合は全て別科目になりますが、精神保健福祉士と社会福祉士をめざす場合は半分が共通する科目なので、社会福祉士だけをめざす人の1.5倍ほど勉強するイメージです。二つの資格をとることは楽ではありませんが多くの先輩はそれを実現しています。

―― 介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士の仕事内容の違いは、また、どのような職場があるか、教えてください。

小林学科長 介護福祉士は主に高齢者や障害者の日常生活の支援や、介護者へのアドバイスなどをします。主に老人ホームや障害者施設、デイサービスなどの在宅サービスで働きます。社会福祉士は、何らかの事情で生活困難を抱えた人を対象に公的サービスの利用を支援したり、環境を調整したりします。活躍の場は、公務員、施設の相談員、病院の医療ソーシャルワーカーの他、刑務所での社会復帰支援やスクールソーシャルワーカーなどに広がっています。精神保健福祉士は、精神的な病によって生活困難を抱えた人を対象に、自立生活を支援します。病院や保健所、社会復帰のための施設や相談機関などで活躍します。

―― マネジメント系2コースの学びの特長について、教えてください。

山本副学科長 文系・経営学部に準ずるカリキュラムから構成されているマネジメント系は、①診療情報管理士の資格取得をめざす「診療情報管理コース」と、②経営、会計、情報を専門的に学ぶ「医療福祉マネジメントコース」の2つのコースがあります。

―― 2コースを卒業した後、病院や医療福祉施設で活躍することになると思いますが、その医療事務職の仕事内容、また診療情報管理士の資格取得と役割について教えてください。

山本副学科長 医療事務職は外来受付、医事会計など病院フロントの中核的な業務を担当する仕事です。最近は医師に代わり、電子カルテの代行入力を行う業務が期待されており、高度で専門的な臨床に関する知識が求められています。そのため、診療情報管理士の資格を取得した医療事務職の方が多くなっています。
診療情報管理士はカルテのプロフェッショナルと言われるように、診療記録の管理・分析を行う専門職です。診療情報管理士が作成した統計資料は、病院の経営管理や運営管理を行う上で欠かせないものになっています。
国際医療福祉大学は受験指定校になっていますので、講義の単位を取得しながら受験に必要な指定科目を学習することができます。

―― 医療福祉・マネジメント学科では保育士の資格取得の支援をしていますが、保育士の取得支援の仕組みについて、教えてください。

小林学科長 専門学校等の養成課程を卒業しなくても大学に2年間在籍し、62単位以上を修得していれば専攻に関係なく誰でも保育士の試験を受けられる仕組みがあります。この仕組みを利用して保育士にチャレンジする学生を試験対策講座などで支援しています。試験は春と秋の年2回あり、9科目別々に合否を判定するので、1回で全部受からなくても3年間でとればいい仕組みです。今年春の卒業生には、社会福祉士、精神保健福祉士そして保育士の資格を持って卒業した学生が3人います。

―― 卒業後の進路についてお伺いします。福祉系コースの就職の支援体制はどのようになっていますか。

小林学科長 第一に教員のほとんどが福祉や医療の第一線で働いた経験があるので、現場が求めている人材を考えながら学生の特性も見極め、適切な就職指導やアドバイスができるということです。第二に、すでに多くの卒業生が現場で活躍しているので、その姿を見て先方から「後輩を紹介して欲しい」という話がくることも少なくありません。卒業生とも連携しながら就職指導をしています。

―― マネジメント系コースの就職の支援体制や就職先はいかがでしょうか。

山本副学科長 3点あります。①就職につながる実践的な多くの資格取得が可能なカリキュラムになっていること②全ての学年において少人数のゼミナールにより、教員が学生一人ひとりの個別指導を徹底していること③大学のキャリア支援センターとの連携により就職活動をサポートしていること―などがあげられます。
卒業生のうち医療機関に6割、企業系には3割です。就職率は100%で、学生が希望する地元での就職を実現しています。

―― 学びや資格、進路についてお話を伺ってきました。ここからは在学生と卒業生のお話を聞きたいと思います。まず、在学生の鈴木さん、福祉職をめざした理由を教えてください。

鈴木さん 私が福祉職をめざすきっかけとなったのは、高校2年生の時に参加した国際医療福祉大学のオープンキャンパスです。医療職に興味があり参加したのですが、各学科の説明を聞く中で、初めて社会福祉士や精神保健福祉士という資格があることや、福祉職が多くの人の生活や日常を支えていることを知り、医療福祉学部に入学しようと思いました。

―― 大学受験の時、どんな対策をしましたか。ご自身の経験で有効だと思えたことがあったら、教えてください。

鈴木さん 大学受験に向けて、毎日の授業の勉強と並行して過去問題を繰り返し解いていました。問題形式に慣れることができましたし、時間を設定して本番を想像した状態で何度も問題を解くことで、受験当日も落ち着いた状態で試験に臨むことができました。

―― 大学では、社会福祉士と精神保健福祉士のダブルライセンスの取得をめざしていると聞きましたが、受験対策はどのようにしていますか。

鈴木さん 大学では前期に1コマ、後期に4コマの国試対策講座、毎月の模擬試験があります。それらを通して自分の弱点を知り、苦手科目や重要な制度については専用のノートをつくるなどして理解するように心がけています。

―― 大学の学びの中で、一番懸命に取り組んだ内容、現在最も役に立っている内容は何ですか。

鈴木さん 大学では、講義のほかに演習から学ぶことも多いです。コミュニケーション技術などは特に演習で実践も通して修得しようと努めました。

―― 患者さんや利用者と接する際には、コミュニケーションが必要です。4年生の鈴木さんは、来年2月に国家試験にチャレンジするわけですが、社会福祉士と精神保健福祉士の資格を取得した後、卒業後はどのような仕事をしたいと考えていますか。

鈴木さん 今は、病院に入院されている方の退院支援にかかわれる医療ソーシャルワーカーの仕事をしたいと思っています。
 
―― 鈴木さんは医療ソーシャルワーカーの仕事を希望されていますが、医療ソーシャルワーカーについて、教えてください。

小林学科長 医療ソーシャルワーカーは病院で働く社会福祉の専門職です。例えば、緊急で入院した人が医療費を払えない場合、国から支援を受けられる制度がありますが、その利用を支援します。また、高齢者がこれから退院して自宅で療養するための準備段階、つまり入院している時に、自宅の改修や介護サービスの利用がスムーズにすすむように支援することも医療ソーシャルワーカーの仕事です。

―― 卒業生の前田さんは現在、お勤めの白河厚生総合病院で、どのようなお仕事をされていますか。

前田さん 現在、医事課に勤務し、外来の窓口での対応やDPCコーディング、がん登録などの仕事をしています。

―― DPCコーディングはどのような業務ですか。

前田さん DPCとは診療報酬制度のひとつで入院患者さんの病名と治療内容から医療費を判定するプロセスです。これまでの医療事務職が行っていた保険請求業務にプラスして病気に関する知識とデータ分析を行うスキルが求められています。

―― 高度化・専門化が進む医療事務職に就くときの基礎資格としても診療情報管理士が重視されていますが、がん登録とはどのような業務をするのでしょうか。

山本副学科長 ビッグデータという言葉をお聞きになられたことがあると思います。医療の領域におけるビッグデータに関する事例としては、「がん登録」業務があります。がんで入院した患者さんの診療内容を全国統一したフォーマットにて厚生労働省へ提出する業務です。データの提出は義務化されたため、臨床が分かり、データを扱う専門職である診療情報管理士は病院業務になくてはならない人材になっています。

―― 前田さんが大学時代、診療情報管理コースを志望した理由を教えてください。

前田さん もともと医療事務の仕事に興味があり、調べていくうちに医療事務職における、より専門的な資格である「診療情報管理士」を高校生のときに知ったのがきっかけです。

―― 大学での学びを振り返って、一番懸命に取り組んだ内容、現在最も役に立っている内容は何ですか。

前田さん 診療情報管理士の指定科目で学修した基礎医学です。体の部位などの基本的な事に加え、病名とその診断や治療に関する幅広い事柄がたくさん書かれているので理解することに難しいこともありましたが、現在の仕事のなかでカルテをみて診療内容を確認する際に大学での勉強が役立っていることを実感します。

―― 診療情報管理士の受験勉強はどのように行っていたのですか。

前田さん 大学で行われる定期的な模擬試験に合わせた予習・復習などの試験勉強を行いました。模試でよく出る単語や範囲をノートにまとめて、友達と問題を出し合っていました。自分はここが苦手なんだなと分かることができるし、友達とクイズ形式にすることで、頑張ろうという気持ちになり、お互いいい刺激になっていました。

―― 本学は模試や補講などの対策が充実していますし、友人と一緒に勉強することで励みになりますよね。前田さんは、大学での学びを経て、病院でこれまで勤務した中で、仕事でやりがいを感じるのはどんな時、あるいは、どんな事ですか。

前田さん 患者さんとのコミュニケーションや医師・看護師などスタッフとの連携を大切にする考えは、大学の関連職種連携という講義の学びが生かされています。月初めのレセプト提出時期は忙しいですが、保険請求業務という病院における大切な仕事に関わっているということを意識しています。このように緊張感のある仕事を行ったときにやりがいを感じます。

―― 資格取得の際には、施設や病院等で実習があります。鈴木さん、前田さん、それぞれ医療福祉施設の実習について、感動したこと、苦労したことなど印象に残っていることはありましたか。

鈴木さん 私は去年、高齢者施設で実習を行うなかで認知症の利用者の方とかかわることも多く、言葉の掛け方からどうすれば良いのか分からず悩むことがありましたが、現場で働く専門職の方の対応を間近で見られたことは非常に勉強になりましたし、貴重な経験でした。

前田さん 医療事務職のイメージは漠然としていましたが、大学3年生の夏に1カ月間の病院実習という貴重な経験をすることを通じて業務の理解が深まりました。実習中には外来受付を体験した時に、患者さんと触れ合う機会があり、患者さん一人ひとりに合った対応が必要になることを学びました。案内を行った患者さんから「ありがとう」と感謝の言葉をいただくこともあり、印象に残っています。

―― 医療福祉の仕事をめざす上で必要な要素は何ですか。どのような人が医療福祉の仕事に向いていますか。

小林学科長 以前は「コミュニケーションが必要」などと、この仕事に向いている人の条件を考えることもありましたが、現実に様々な学生が入学してきて卒業し、現場で活躍している姿を見ると、向き不向きはないと思っています。あえて言えば、一人ひとりの人間の存在が、それぞれ全て価値があるということさえ理解できればといいと思います。

―― 医療福祉学部の学びをもっと知りたいという方のために、これから開催される大田原キャンパスのオープンキャンパスではどのような体験ができるか、教えてください。

山本副学科長 来場者一人ひとりに学科の教員が丁寧に説明させていただきます。大学での学びに不安を持つ高校生や保護者の方もおられるでしょうから、実際に大学の授業で使用している教科書を見ながら勉強の内容について説明いたします。電子カルテが体験できるコーナーを設けていますので、見たり触れたりしていただく機会になることを願っています。

―― 締めくくりにパネリストの皆さまから、高校生・受験生へアドバイスを兼ねたメッセージをお願いします。

鈴木さん 高校生の皆さんは受験シーズンを迎えますが、大学では新しい出会いも自由も増えると思うので、大学生活を楽しみに頑張っていただきたいです。

前田さん 勉強の不安もあると思いますが、諦めずに頑張れば良い結果に結びつきます。志望校に合格した自分を思い描いて最後まで走りつづけて欲しいです。

山本副学科長 マネジメント系2つのコースは、栃木県北の文系・経営学部に準じたカリキュラムから構成されており、医療と経営のハイブリッドの学びができるようになっています。商業系の高校で簿記を学ばれている生徒さんに対しては、全商協会に加盟されている高等学校を対象にした特別推薦枠による入試制度(特別推薦型選抜の入試制度)も設けております。診療情報管理士をめざし、将来の病院経営をリードするマネジメント職になられることを期待しております。

小林学科長 介護福祉コースに限定した具体的な情報ですが、国の制度で284万円の貸与があり、卒業後5年間介護の現場で働くと返済が免除されます。また、大学の隣で施設を運営する社会福祉法人でも120万円を貸与する奨学金があります。これらをうまく組み合わせて活用し、卒業後介護福祉士として5年間働くと、最大404万円の貸与を受けた奨学金が返済免除される場合があります。本学科は「頑張る学生を応援する学科」です。色々な資格を取ることは楽ではありませんが、頑張れば取得できることは多くの先輩が証明しています。このパネルディスカッションを通して、医療福祉の様々な職種に対する理解が広まれば幸いです。

―― これで「医療福祉の学びと仕事」に関するパネルディスカッションを終了させていただきます。皆さん、ありがとうございました。

  • パネルディスカッションの様子
  • 学科長 小林 雅彦 教授
  • 副学科長 山本 康弘 教授
  • 精神保健福祉コース4年 鈴木 愛可さん
  • 卒業生 前田 志帆さん
  • 司会進行 滝澤 雅美 講師