大田原キャンパス

学科トピックス

【シリーズ 私の臨床2】 読むことの障害

2020.10.30

私たちは普段の生活でことばを使用してコミュニケーションを図っていますが、ことばを聞いたり話せるにも関わらず、"文字を読み、理解すること"だけが選択的に障害される方々がいらっしゃいます。大人の方が後天的な脳の損傷によりこのような障害を発症した場合は、失読(しつどく)と呼ばれています。
私が言語聴覚士としてリハビリを担当した方も突然、脳梗塞により"失読"を呈しました。クラシックコンサートを趣味にされ、奥様と悠々自適の生活を送っていましたが、体は自由であるのに読むことだけが難しくなり、新聞はもちろん、テレビのテロップも理解できなくなりました。なにより、その方にとって一番ショックだったのが、趣味であるコンサートのチラシやパンフレットが読めないことでした。
 外来でのリハビリに熱心に通われ、半年ほど経ったころでしょうか、ゆっくり新聞のコラムも読めるようになっていました。発症直後は自宅に籠っていましたが、"また文字を読める"ことで自信を取り戻し、駅の電光掲示板を見ながらひとりで電車を乗り継ぎ、都内のクラシックコンサートを聴きに行けるまでになりました。リハビリは終了しますが、お孫さんとのお宮参りの写真と共にお手紙をいただき、その後も交流が続いています。

また、100歳の別の患者さまは、折り紙に『命は燃やしつくすためのもの』と書いて下さいました。人生の大先輩からの重みのある言葉に、いつも励まされています。
言語聴覚学科 地主 千尋