大田原キャンパス

学科トピックス

【シリーズ 私の臨床3】 発達障害児の言語臨床

2020.11.12

 発達障害という言葉をよく聞くようになりました。日本では発達障害とは、自閉スペクトラム症、注意欠陥/多動症、学習障害の子ども達を指します。発達障害の子ども達も言語・コミュニケーションの問題を持つため、大学内にある「言語聴覚センター」に大勢通っており、言語聴覚士(ST)が指導にあたっています。

 今から40数年前の学生時代にある病院で研修をさせてもらっていました。そこではアクスラインの「プレイセラピー」を基本に発達障害の子ども達のグループ指導を行っていました。そこにA君という自閉症スペクトラム障害と知的障害を持った男の子が参加していました。言葉はなかったのですが、水遊びが大好きで、時に裸ん坊となり病院内を走り回り、「ニギニギナッゴー」という言葉を合い言葉に楽しく遊ぶ姿が今でも思い出されます。

 A君は保育園から小学校の特別支援学級に入学し、中学校校からは特別支援学校に、そして高等部に進学しました。そのA君と10数年ぶりに会う機会がありました。小さくて可愛かったころの面影も残っていましたが、身長は私を超えるほど大きくなっていました。とても驚いたことは言葉がなかったころの保育園時代のことを覚えており、たどたどしい言葉で楽しく病院内のプレイルームで遊んだことを語ってくれたのです。お母さんは、高等部の実習をクリーニング店で行っていること、その実習から帰ると必ずテレビ台の下に置いてある病院のプレイルームで撮った写真のアルバムを眺めて、そこから実習を行うための力(エネルギー)を得ているようだと言われていました。このことは幼児期の人との楽しい経験、子ども達の遊びや自発性を大切にした関わりが、10数年後の子どもの生きる力に影響しているのだと強く実感する出来事でした。

 発達障害者支援法や特別支援教育の進展とともに、発達障害の子ども達の早期からの支援の大切さが強調されるようになってきています。「言語聴覚センター」に通う子ども達にとって言語聴覚士との出会いが10年後、20年後の生きる力に繋がって欲しいと思います。

言語聴覚学科・言語聴覚センター 畦上恭彦

  • ※言語聴覚学科学生の実習施設である 言語聴覚センター(クリニック2階)