大田原キャンパス

学科トピックス

【シリーズ 私の臨床6】 失語症2(しつごしょう)

2020.12.21

「失語症」は脳卒中などによって話すこと、ことばを聞いて理解することや読み書きが困難になる障害です。

ある方はとても重い失語症を発症され、最初は自分の名前も言えないほどで、根気よく外来リハビリに通っておられました。ある日、ご本人が「えーっと、うーんと、、、車、車、、、」と言い、さらに紙に"7"と"牛"とお書きになりました。みなさん、これが何を意図しているか分かりますか?正解は「さっき行ったコンビニで牛乳を買い忘れてる」です。ご家族の方はお分かりになり、一生懸命伝えてくれたこと、そしてそれが分かったことがとても嬉しかった、感激したと報告してくださいました。また、それを聞いた私自身も本当にうれしく、3人で笑い泣きしました。コミュニケーションは話し手と聞き手の相互作用によって成り立ちます。リハビリでは言語聴覚療法ではご本人に対する訓練はもちろんのこと、ご家族への支援も行います。この方のご家族様は熱心にリハビリに参加され、ご本人の伝えたいことを推測する訓練をうけていらっしゃいました。その後、このエピソードを契機にご本人の伝える力、ご家族の受け取る力に磨きがかかり、伝わる・分かることが成立することが増えていきました。

失語症によってことばによるやりとりが困難になると、ご本人だけでなくご家族や周囲の人も困惑します。リハビリを通して、(自分や家族に)障害があっても自分らしく生きることを支えたいと思っています。また、私自身、こういったエピソードに毎回、元気とパワーをもらっています。

言語聴覚学科 小森規代