大田原キャンパス

学科トピックス

【シリーズ 私の臨床11】コミュニケーションを支える"聴こえ"

2021.05.06

 言語聴覚士は、聴覚障害を持つ方のリハビリテーションを行います。耳鼻咽喉科の医師とともに、聴力検査や補聴機器の調整、リハビリテーションを行い、赤ちゃんから高齢者まで様々な世代の方とお会いします。そこで、"聴こえ"の大切さを実感したエピソードを1つ紹介します。
 補聴器の購入を目的に来院された70代Aさん。一緒に来院されました娘さんは「全然聞こえていなくて、おそらく認知症もあるんです!」とおっしゃっていました。確かに、Aさんと娘さんの会話はちぐはぐし、Aさんは全く異なることをお話しされていました。
 Aさんの補聴器の試聴が始まると、みるみるうちにご家族との会話がスムーズになり、会話も増えていかれました。3ヵ月後、補聴器を購入される際には、娘さんが「聞きたくないことは、聞こえないふりするんですよ(笑)」など冗談をおっしゃるほど、ご家族でコミュニケーションが図れているようでした。
 Aさんは、聴力低下により人の話が聞き取りにくい中で、精いっぱい答えようとした結果、会話がちぐはぐになってしまったと思われます。この状態が日常化してしまうと、だんだんコミュニケーションが減り、家庭内で孤立してしまうこともあり得ます。
 言語聴覚士は、単に"聴こえ"を補償するだけでなく、コミュニケーションを支える仕事であり、私は日々コミュニケーションの大切さを実感しながら仕事をさせてもらっています。

言語聴覚学科 佐藤 友貴