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パネルディスカッション「医療福祉の学びと仕事」の詳報をアップしました

2021.06.21

 医療福祉学部医療福祉・マネジメント学科が6月20日、「医療福祉の学びと仕事」をテーマに宇都宮市の栃木総合文化センターで開かれましたパネルディスカッションの詳報をお知らせいたします。教員と卒業生、在学生の4人が、それぞれの立場から、どのような学部で、どのような学修をして、将来、どのような仕事に就くのか、などを語っていただきました。

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パネルディスカッション「医療福祉の学びと仕事」

パネリスト
山本康弘 医療福祉・マネジメント学科長
林和美 医療福祉・マネジメント副学科長
等々力彩菜 2018年医療福祉・マネジメント学科卒業、国際福祉医療大学病院に勤務
青木綾香 医療福祉・マネジメント4年生
滝澤雅美 医療福祉・マネジメント学科講師(司会)

滝澤 医療福祉・マネジメント学科は福祉系の3つのコースとマネジメント系の2つのコースに分かれています。マネジメント系について、山本学科長から説明をお願いします。

山本 文系経営学部に準ずるカリキュラムから構成されていますマネジメントコースは、診療情報管理士の資格取得を目指す診療情報管理コース、そして経営、会計、情報などを専門的に学ぶ医療福祉マネジメントコースの2つあります。

滝澤 2つのコースを卒業したのち、病院や医療福祉施設で活躍すると思いますが、その医療事務職の仕事内容、また診療情報管理士の資格取得と役割は?

山本 医療事務職は外来受付、医事会計など病院フロントの中核的な業務を担当する仕事です。最近は医師に代わり、電子カルテの代行入力を行う業務が期待されてきており、高度で専門的な臨床に関する知識が求められています。そのため診療情報管理士の資格を取得した医療事務職の方が多くなっています。
 診療情報管理士はカルテのプロフェッショナルといわれるように診療記録の管理・分析を行う専門家です。診療情報管理士が作成しました統計資料は病院の運営管理そして経営管理に欠かす事のできないものになっています。国際医療福祉大学は診療情報管理士の受験指定校になっていますので、講義で単位を取得し、受験に必要な指定科目を学修することができるカリキュラムになっています。

滝澤 林副学科長にお伺いします。福祉系の3つのコースの学びの特長、ダブルライセンスを目指すカリキュラムについてご説明ください。

林 福祉系3コースでは国家資格である介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士を取得して、専門職として社会福祉を進めていく人材を育てています。それぞれの資格には学ぶ内容が専門分化されていますが、ソーシャルワークと呼ばれる相談援助技術が基盤になります。つまり生活のしにくさや困りごとについて受け止め、分析し、最も適切な制度やサービスといった社会資源につなぐ内容です。
 この共通基盤に精神保健福祉や介護福祉の専門性を学ぶカリキュラムが用意してありますので介護福祉士と社会福祉士、社会福祉士と精神保健福祉士といった2つの国家資格がチャレンジできるように科目の配当や時間割など工夫をして、学生の学びを支援しています。

滝澤 介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士の仕事内容の違いと、それぞれどのような職場があるか教えていだけますか。

林 介護福祉士は主に高齢者や障がい者、障がい児の日常生活を支援したり、介助者へのアドバイスなどをしたりします。主に老人ホームや障がい者の施設、デイサービスなどの在宅サービスで働きます。
 社会福祉士は、社会福祉士という名称ではなく働いているので、なかなか会うことができません。社会福祉士は何らかの事情で生活困難を抱えた方を対象に公的サービスの利用を支援したり、環境を調整します。活躍の場は公務員であったり、施設の相談員、病院の医療ソーシャルワーカーのほか、刑務所での社会復帰支援やスクールソーシャルワーカーなどに拡がっています。
 精神保健福祉士は精神的な病によって生活困難を抱えた人を対象に自立生活を支援します。精神科病院や保健所、社会復帰のための施設や相談機関などで活躍します。

滝澤 医療福祉・マネジメント学科では保育士の資格取得の支援をしています。保育士の資格取得の仕組みについて教えていただけますか。

林 国家資格である保育士ですが、大学に2年間在籍し62単位以上修得していれば誰でも保育士の試験を受けられる仕組みがあります。この仕組みを利用して保育士にチャレンジする学生を支援しています。試験は春と秋の年2回あり、9科目別々に合否を判定するので、1回で全部受からなくても3年間で取得すればよい仕組みです。多くの学修が福祉の学びと連動しているので、比較的合格しやすい科目も多いです。学生の大半が2年生からチャレンジをしています。従ってダブルライセンスにもうひとつの保育士という国家資格を取得して卒業していく学生も多いです。

滝澤 卒業後の進路についてお伺いします。マネジメントコースの就職の支援体制や就職先について、教えてください。

山本 大きく3点あります。1点目は、就職につながる実践的な多くの資格取得が可能なカリキュラムになっていることです。2点目は、すべての学年において少人数のゼミナールにより教員が学生さん一人ひとりの就職活動を個別指導としてサポートしていることです。3点目は、大学全体のキャリア支援センターとの連携により就職をサポートしていることが挙げられます。卒業生のうち医療機関に約7割、企業には約2割の学生が就職され、全体の就職率は100%となっています。学生さんが希望する地元の就職をそれぞれ実現しています。

滝澤 福祉系コースは。

林 福祉系コースでは、教員のほとんどが福祉や医療の第一線で働いた経験があります。従って現場が求める人材とは何かということがよく分かっています。学生の特性を見極め、適切な就職指導やアドバイスができます。2つ目に既に多くの卒業生が現場で活躍しているので先方から後輩を紹介してほしい、という話がくることも少なくありません。卒業生とも連携しながら就職指導をしています。  少子高齢化という状況なので求人や就職先はたいへん多いですが、本人が満足できるところに就職出来るような指導をしています。就職先は福祉施設等が4割、病院等が3割、公務員等が17%というようなかたちになっています。就職率は100%です。

滝澤 在学生と卒業生のお話も聞きたいと思います。在学生の青木さんが、この大学を目指したきっかけを教えてください。

青木 私は高校生のときに参加したオープンキャンパスで医療事務だけではなく経営や会計の資格取得や一般企業への就職もできると聞き、この国際医療福祉大学を目指しました。

滝澤 青木さんは3年生のときに、診療情報管理士認定試験を受験し、合格しましたね、受験対策はどのように取り組みましたか。

青木 学校で友達と教え合いながら勉強していました。とくに、大学で行われる模擬試験の問題の解き直しに取り組み、自分が苦手な部分を中心に繰り返し学修を行いました。

滝澤 友人と一緒に勉強することは、とてもよい励みになりますね。青木さんは現在、多くのことを学んでいるところですが、診療情報管理士以外に取得した資格があったら教えてください。

青木 学科では講義のほかに検定試験対策が行われます。医療情報基礎知識検定、経営学検定中級、ビジネス会計などの資格を取得しました。

滝澤 在学中に複数の資格取得ができていますね。いま、就職活動をしていると思いますが。卒業後はどのような仕事をしたいと考えていますか。

青木 これまで大学に大変お世話になりましたので、国際医療福祉大学グループで働きたいと考え、応募しております。本学グループの説明会で医療従事者としてだけではなく、大学事務局で学生さんのサポートを行うことができることを知り、大学事務局で学生さんのサポートができる本学グループに応募しました。

滝澤 診療情報管理コースの学生は医療事務職の仕事を希望されることが多いのでしょうか。

山本 一般文系経営学部に準じたカリキュラムで医療と経営のハイブリットの学びができる医療福祉マネジメントコースは、医療事務職をはじめ、一般事務職など幅広い就職先につながっています。一方、診療情報管理コースでは診療情報管理士を取得し、病院へ就職している学生さんが多く、昨年度は医療機関が7割、2割が医療関連企業、いわゆるヘルスケア産業などを含めた一般企業への就職などにつながっています。
 ビックデータという言葉を聞かれたことがあると思います。医療の領域におけるビックデータというと、がん登録業務が挙げられます。がんで入院した患者さんがどのような診療をしたのか、全国統一のフォーマットを厚労省へ提出する業務があります。データの提出は義務化されていますので、臨床がわかり、そしてデータを扱う専門職である診療情報管理士は病院業務になくてはならない人材となっています。

滝澤 等々力さんは、現在お勤めの国際医療福祉大学病院ではどのようなお仕事をされていますか。

等々力 医療相談室というところで働いています。入院されている方の退院支援や転院調整、外来で通院されている方の療養上の困りごとなどのご相談を受けています。
 ご入院されている方への支援では、ご自宅で受けられるサービスの調整や、リハビリや療養目的で転院される方の医療機関の紹介などを行っています。外来で通院されている方には、通院が困難になった方に往診の先生をご紹介したり、医療費の支払いが困難になった方に医療費助成制度をご案内するなど様々な業務を行っています。いわゆる医療ソーシャルワーカーと呼ばれる仕事をしています。

滝澤 等々力さんのお仕事である医療ソーシャルワーカーについて教えてください。

林 医療ソーシャルワーカーとはメディカルソーシャルワーカー、MSWと訳されることがあります。メディカルソーシャルワーカーは病院で働く社会福祉の専門職です。例えば緊急で入院された方が医療費を払えない場合、国から支援を受けられる制度がありますから、その医療を支援したりします。また高齢者がこれから退院して自宅で療養するための準備段階として介護保険を利用したりケアマネジャーと連携をとったり、つまり入院しているときに自宅の改修や介護サービスの利用がスムーズにいくように支援することも医療ソーシャルワーカーの仕事です。

滝澤 等々力さんが、本学で社会福祉コースを志望した理由を教えてください。

等々力 高校生のときに膵臓がんだった祖父を自宅で看取った経験があり、高齢者の方が自分の望む場所で最期を迎えるお手伝いをしたいと思ったことがきっかけです。看護師さんのように直接ケアするようなお仕事も考えたのですが、入院していた祖父が自宅に帰るときにソーシャルワーカーの方に自宅に帰る調整をしていただいたということがあり、社会福祉コースに行って高齢者福祉とか保健医療分野で仕事をしたいと希望して社会福祉コースを選びました。

滝澤 社会福祉士の国試合格率は全国平均3割ととても難しい試験です。社会福祉士の資格取得に向けてどのように勉強したか、教えてください。

等々力 社会福祉士の国家試験は全部で19科目の問題が出題されます。幅広い知識が必要となります。過去の問題や模擬試験を繰り返し解いて、点数が伸びなかった分野を集中的に勉強していきました。分からないところを先生に聞きに行ったり、大学のカフェテリアで友達と教え合いながら勉強していた思い出があります。

滝澤 学生生活を通して一番懸命に取り組んだ内容、現在の仕事で役立っていることは。

等々力 福祉施設や医療機関での実習に力を入れてきました。特に4年生のときの関連職種連携実習という実習では、他の学科の生徒とチームを組んで実際に病院にご入院されている方の退院の支援計画を立てる実習になっています。そこで得た経験は今の仕事にも役立っています。

滝澤 多職種連携の学修を進めたということですが、具体的にはどのように行っていたのか、教えてください。

等々力 講義や演習を通してチーム医療・チームケアについて学んで4年生のときに総仕上げとして関連職種連携実習を行います。他の学科の生徒たちと相談しながら退院支援の方針を決めていくのですが、職種によって患者さまの見方や支援の仕方が変わりますので、それぞれの職種の役割を理解して協力することで現在の医療現場で求められているチーム医療・チームケアの在り方を学んでいきます。

滝澤 仕事でやりがいを感じるのは。

等々力 患者さまやご家族の方から相談して良かった、話してほっとしたと言ってもらえたときです。この先どうしていったらいいのか不安を抱えている方が多いので、必要な情報を提供することによって安心していただけるよう心がけて仕事をしています。

滝澤 青木さんは診療情報管理士、等々力さんは社会福祉士の資格取得の際に施設や病院で実習があったと思いますが、医療福祉施設での実習で印象に残っていることや理解が深まったことはありますか。

青木 私は病院で外来受付や会計窓口の業務を体験することにより、患者さんに対するお声掛けの大切さを感じ、患者さんからありがとうの言葉を受けたことが印象的です。

等々力 現在、勤務している国際医療福祉大学病院で実習をしました。カンファレンスに同席し実際に業務を間近に見ることができたので医療ソーシャルワーカーの仕事への理解が深まりました。

滝澤 部活やサークルの所属、アルバイトの状況を教えてください。

青木 アルバイトは自分の時間に余裕があるときにやっていました。オープンキャンパスの手伝いや大学行事などに積極的に参加しました。

等々力 1〜4年次まで個人経営の接骨院でアルバイトをしていました。受付の業務をしていたので様々な方とコミュニケーションをとることができて、いい経験になりました。

滝澤 高校生のとき、大学生活についてどのようなイメージを持っていましたか。

等々力 大学に入学してから感じたことは、自由な時間が多いということです。高校では決められた時間割で動いていましたが、大学では自分で履修登録をしていきますので空いた時間の使い方を自分で決めることができます。講義の合間にカフェテリアで友人と自習をしたり、図書館で調べものをしたり、有意義な時間の使い方ができます。

青木 高校生のときは、大学は自己責任で、自分ひとりで全てを行う必要があると思っていました。しかし入学後は先生方のサポートが手厚く、安心して生活を行うことができました。学生が多いため、多くの人と友達になることができ、アットホームな雰囲気で学修を行うことができます。

滝澤 大学への受験対策は。

青木 AO入試(現在の総合型選抜入試)で入学しました。対策は高校の先生方に何度も面接の練習を行ってもらい、話す練習を行いました。当時はグループディスカッションがあったので、グループディスカッションを行う友達と一緒に練習しました。

等々力 推薦入試で入学しました。高校3年生のときに小論文対策として、先生から小論文のテーマと用紙を渡されて翌日に提出することを日々繰り返し、短い時間で文章を書く練習をしたので、受験のときどんなテーマが出てきても大丈夫という自信がつきました。

滝澤 学科長、副学科長から受験生に対して学科の支援体制を教えてください。

山本 マネジメント系の2つのコースは、いわゆる栃木県北の経営学部に準じたカリキュラムになっている構成ですので、医療と経営のハイブリットを学べる仕組みになっています。その中で特に会計の領域、簿記の領域を応援する制度を設けています。商業系の高等学校で簿記を学ばれた生徒さんに対しては全商協会に加盟されている高等学校を対象にしました特別推薦枠入試制度を設けています。たとえば診療情報管理士を目指し、将来は病院経営をリードする、そういうマネジメント職を目指していただけることを期待しています。

林 福祉系3コースでは、ダブル、トリプルといった国家資格を取れるように教員一同一丸となって、支援をしています。介護福祉コースに限ると、国の制度で、4年間で284万円の貸与があります。卒業後5年間、介護福祉士として介護現場で働くと返済が免除されます。介護福祉士として働くという人にはこの奨学金を活用することはとてもメリットがあると思います。栃木県には、関連法人の介護福祉施設で働く場合は2つと合わせて最大404万円の奨学金を受けることができます。5年間働けば404万円の返済が免除される仕組みがあります。介護福祉士として働こうという方にはとても良い制度だと思います。

滝澤 高校生、受験生の皆様にアドバイスをかねてメッセージをお願いします。

青木 この学科は医療だけではなく様々な一般企業への就職もできるため、多様な道に進めると思います。大学生活に不安がある方も、少人数のゼミナール制度があるので困った時や悩んだ時には先生方がサポートしてくださるので安心して大学生活を送ることができると思います。

等々力 これから受験の時期になりますので不安なこともあるかと思いますが、目標に向かって努力していれば、きっと良い結果につながります。感染症が流行している時期ですので体に気を付けて無理をせず頑張ってください。

林 本学科は頑張る学生を応援する学科です。いろいろな資格を取ることは楽ではありませんが、頑張れば取れることは多くの先輩が証明しています。このパネルディスカッションを通して医療福祉の様々な職種に対する理解が拡がれば幸いです。

山本 医療福祉・マネジメント学科は2009年、当時の医療経営管理学科と医療福祉学科が統合し現在の医療福祉・マネジメント学科として開設されました。「医療も福祉もマネジメントも分かる人材の育成、3つの学びを1つの力に」という方針のもと、福祉系の3つのコースと経営系の2つのコース、で構成されている学科です。1年次は医療の基礎も、福祉の基礎も、マネジメントの基礎も学修をしていく中で、大学の学びや、大学の生活にも慣れていただきながら、また自分自身の特性を見極めていただき、2年生に進級するときにコースの選択を行っていただく、というカリキュラムになっています。
 例えば福祉系の国家資格にチャレンジをしながらマネジメント系の知識を深めたり、またマネジメント分野の就職を目指しながら福祉の基礎知識を学んだりすることで将来の選択肢が大きく拡がるものと思います。2年次からコースに分かれ、専門分野の学修をしますが、各コースのメインの資格だけではなく様々な関連する資格や知識も見に付けられるのが大きな特長の学科になっています。
 社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士、診療情報管理士、そして医療経営スタッフなど、ご興味のあるみなさんと一緒に学べる日を楽しみにしています。