大田原キャンパス

学科トピックス

【私の研究:オンラインによる就労支援】

2021.11.01

 脳にダメージを受けた場合、高次脳機能障害(こうじのうきのうしょうがい)といって日常生活を送る際に、さまざまな問題に直面する方がいらっしゃいます。実際の症状としては、物ごとに集中できない、記憶力が低下する、段取りよく行為が出来ないなど、症状は多彩です。発症年齢も様々で、働き盛りの若い方でも起こりえます。今年の学会では、高次脳機能障害の患者様に対して言語聴覚療法を行い、オンラインを用いた就労サポートを行ったケースについて発表しました。
 コロナ禍で日本中に広まったZoomオンラインシステムですが、本校でも緊急事態宣言下は授業で大活躍でした。そんな折、今回の症例の方と出会いました。話を伺うと、職場は100km以上離れているため、現地に私が伺って相談したり、障害の対処法を実際に伝えることは難しいということが分かりました。そこで、会社の方とZoomによる面談を重ね、周囲の障害に対する理解を促しました。現在では、お一人で電車で通勤しながら、仕事を継続することができています。
 障害を抱えて職場復帰する方の中には、周囲の理解が得られず退職しなければならないケースも多々あります。オンラインの力を借りることで、言語聴覚士もリハビリ室の壁を越え、社会で困っている方々を支えていける、少し光が見えたような気がしました。
 私の好きなアーティストの歌詞に"(社会の)歯車にならなくてはなぁ"という部分があります。患者様にはおひとりおひとりの人生があり、病気や受傷を機に自分の歯車を戻す場所を失ったり、歯車がうまく回らない方もいらっしゃいます。入院中だけではなく、社会の中で歯車がゆっくりとしっかりと回るまで言語聴覚士が寄り添える社会が一歩近づいたような気がしました。

言語聴覚学科 地主千尋