日本薬学会第144年会で薬学部の中山ユミさんが学生優秀発表賞を受賞しました
2024年3月に横浜で開催された日本薬学会第144年会で、薬学部の中山ユミさん(分子構造生物学分野、三浦隆史教授)が研究発表を行い、学生優秀発表賞を受賞しました。
受賞演題
「コレシストキニンCCK8に新たに見出された銅結合配列の生理的役割」
中山ユミ、河内良太、工藤ななみ、野原萌絵、熊田知明、三浦隆史
(国際医療福祉大薬)
【発表内容】
脳内で神経伝達物質として働くドパミンは酸化されやすい物質であり、酸化に伴う変質過程で神経細胞に悪影響を及ぼす活性酸素種を発生させる危険性を持ちます。ドパミンの酸化は銅イオンにより顕著に促進されるため、脳内にはドパミンと銅の不都合な酸化還元を抑制する仕組みが存在すると考えられます。今回、我々はコレシストキニンが酸化還元の制御を担う銅結合物質であることを新たに明らかにしました。コレシストキニンは消化管と中枢神経に存在する脳-腸ペプチドとして知られており、脳内では主にオクタペプチドCCK8(アミノ酸配列:DYMGWMDF-NH2)として存在します。CCK8は生体内で存在し得る2種の銅イオンCu(II)とCu(I)の両者と結合する性質を持つため、銅の酸化還元を抑制し、結果的にこれと共役するドパミンの酸化還元を抑制することができます。脳内においてCCK8はドパミンと共存することが以前から知られており、その理由は多くの研究者の関心を集めてきました。従来はドパミンの作用を調節する目的でCCK8が共存すると考えられていましたが、我々が得た知見は、ドパミンと銅の不要かつ危険な酸化還元を抑制し、脳を酸化ストレスから守る役割をCCK8が担っている可能性を示しました。