大田原キャンパス

作業療法士ってなに?

作業療法の職域について

作業療法の分野を一般的に説明すると、身体に障害があるひとのリハビリテーション、精神に障害があるひとのリハビリテーション、子どものリハビリテーション、高齢者のリハビリテーションなどがあります。

1.各分野における作業療法の共通する目標

作業療法は、


  • 1)障害をもったひとの障害そのものを回復・軽減させる、治療することを目標とします。
  • 2)障害をもったことで出来なくなった朝起きてから寝るまでの日常生活上のすべての動作を再獲得することを目標とします。
  • 3)障害をもったことで出来なくなった、社会への参加活動や家庭内の役割などの制約を緩和し障害をもつ前と同じような活動や役割をもてるようにすることを目標とします。
  • 4)重い障害が残ったひとに対しては、そのひとの残された能力を最大限発揮できるように、作業活動を提供し、そのひとらしく過ごすことができる『時間と空間を提供すること』を目標とします。

谷口教授のワンポイントコラム

作業療法学科長 谷口 敬道 教授
保健医療学部作業療法学科 学科長 谷口 敬道

作業療法士からみて、『時間と空間を対象者へ提供する』こととは、対象者からみると『一所懸命活動をすること、我を忘れて何かに打ち込むこと、本人の時間・空間を占有すること』につながります。この事を英単語で表すとOccupy(オキュパイ)という動詞になります。その名詞形がOccupation(オキュペーション)です。
作業療法は Occupational Therapy(オキュペーショナル セラピイ)といい、何らかの障害をおもちの対象者に対して上記の


  • 1)治療・回復・障害軽減のため
  • 2)動作獲得のため
  • 3)社会生活の定着のため
  • 4)限られた能力を最大限発揮するため

に、『本人が一所懸命専念』できる活動=Occupyできる活動=作業(Occupation)を手段として用います。

対象者にとって心身の機能を回復する過程は、私たちの想像を絶する毎日の連続です。そのなかで、『自分自身の障害があることを忘れてしまうぐらい一生懸命に何かに打ち込む時間・空間があり、その結果、心身の機能も回復していく・・・』。この事が、作業療法の根源的な考え方です。想像してみてください。皆さんの提供した作業が、治療手段となってその方の機能が回復し、病院からもともとの地域での生活にもどられていく姿を。『作業』という言葉の意味は、大変広くてリハビリテーションの仕事を希望する際にも戸惑うことがあると思います。そんなとき、このコラムがお役に立ったら嬉しいです。

2.身体に障害があるひとの作業療法

この分野で対象となる疾患は、脳血管障害、脊髄損傷、骨折、神経難病、慢性関節リウマチ、糖尿病、呼吸器疾患など多岐にわたります。 病気になった直後などの場合は、病院で寝たままの状態のいわゆるベッドサイドから作業療法を開始します。


例えばベッドで意識レベルが低い状態の時は、寝たきりのままで身体の関節が固くなってしまわないように、関節可動域訓練を行ったり、体調を管理しながら意識レベルを高めるような介入を行います。また、身体機能を回復させる介入に加えて、意識や身体機能の回復に合わせて、自分自身の身の回りのことが自分で出来るように、動作を指導して自立を促していきます。


そして、退院先の自宅で困らないように、玄関やトイレ、お風呂、手すりの設置などそのひとの自立した状態に合わせて住宅を改修するプランなどを計画します。上記の(1-3)で説明したように、障害をもった方の社会における役割は年齢、性別によって異なります。会社で働いている方であれば、元の仕事に戻れるように検討・支援したり、主婦の方であれば主婦としての家庭内役割が担えるように具体的な検討・支援をします。

3.精神に障害があるひとの作業療法

この分野で対象となる疾患は、主に統合失調症、気分障害(うつ病など)、神経性やストレス関連の障害、高次脳機能の障害などです。病院では、入院患者さんの生活リズムや対人関係の改善などの退院に向けた支援として作業活動を提供します。


また、退院された方については、病院からの訪問で相談や生活の支援をするなど地域生活をしていくために必要な支援を行います。この分野では、病院以外でも就労支援、就学支援、当事者や家族からの精神保健や社会保障に関する相談を受けたり適切なサービスを紹介したりします。


実際に、働いている現場に出向いて直接指導したり、企業との間に立って調整をしたり、様々な障害によって対人関係や生活のしづらさを抱えている方々に対し、実社会の中で具体的にサービスを提供していきます。

本学教員、卒業生、在学生が関わっているこの分野の活動の一例についてHPをご覧ください。
NPO法人那須フロンティア URL: http://www.nasu-f.com/ 別ウィンドウで開きます

4.子どもの作業療法

この分野で対象となる疾患は、脳性まひ、知的障害、重症心身障害、自閉症やアスペルガーなどの発達障害、筋ジストロフィなど多岐にわたります。この分野では、生まれた直後から幼稚園、保育園などの就学前の作業療法、小学校や中学校、高校などにおける就学時の作業療法、職業や余暇活動の支援などの作業療法があります。


例えば、生まれた直後であれば、運動面や知的面、情緒面といった心身の発達を促す介入を行います。また、成長とともに遊び(作業)を媒体とした活動を提供し、社会性や心身機能の発達を促し、日常生活上の様々な活動を自立して行えるように介入します。学習面や集団活動、友人との関係など就学場面における課題についても具体的に解決していきます。

本学教員、卒業生、在学生が関わっているこの分野の活動の一例についてHPをご覧ください。
NPO法人こらぼれーしょん那須 URL: http://collabona.web.fc2.com 別ウィンドウで開きます

5.高齢者の作業療法

この分野は、高齢であることに加えて身体障害や精神障害の分野で説明した疾患を合併していたり、認知症や加齢に伴う心機能や呼吸機能の低下など複数の状態像が重なりあった高齢者が対象となります。この分野では、医療機関に加えて、訪問サービスなどによる在宅支援や入所施設における介入など介護保険領域での役割を担います。高齢であることや障害の重い軽いに関わらずそのひとのそのひとらしい生活の定着にむけて作業療法を実施します。