大田原キャンパス

医療福祉・マネジメント学科

Department of Social Services and Healthcare Management

医療福祉・マネジメント学科

ソーシャルワークにとって重要な「記録」の書き方で悩む人を減らすために

ソーシャルワークにおける記録の重要性とその課題

対人援助職は支援のたびに、相談者の困り事や置かれている状況、専門職としての考え、支援した内容などを「記録」として残していきます。「記録」は重要なソーシャルワークの一つの要素ですが、「記録が上手く書けない」という悩みを抱える実践者は少なくありません。

私自身もリハビリテーション病院で医療ソーシャルワーカーとして働いてきましたが、記録の書き方について指導を受けた経験がなく、「どうしたら記録が短時間でうまく書けるのか」「記録を通して医療ソーシャルワーカーの専門性を多職種に伝えたい」と記録の書き方について悩んでいました。

そこで、私と同じような悩みを抱えるソーシャルワーカーのこの状況をどうにか解決したい!と考え、どうしたら記録に対する負担感を軽減できるのか、「記録を書く」という行為が専門職としての思考にどのような影響を与えるかについての研究を始めました。「たかが記録」と思われるかもしれませんが、日本語で文章が書けるということと記録が書けるということは別物です!記録の技術を磨けば支援の質を向上させることができるのです!

F-SOAIPで「記録を書く」こと

記録を書くにあたって、F-SOAIP(エフソ・アイピー)という手法があります。F-SOAIPとは項目式の記録方法で、F(Focus)着眼点、S(Subjective Data)=主観的情報、O(Objective Data)=客観的情報、A(Assessment)=アセスメント、I(Intervention/Implementation)=介入・実施、P(Plan)=計画の6つの項目を用います。

F-SOAIPとは?
F Focus 焦点・場面のタイトル
S Subjective Data 利用者本人やキーパーソン(家族)から得た主観的情報
O Objective Data 観察から得た情報
A Assessment 支援の根拠となる支援者の気づきや判断
I Intervention/Implementation 声かけなどの支援、対応
P Plan 今後の対応について

例えば、叙述形式だと『「急に手術が必要だから、来週から入院といわれました。経済的なゆとりもないですし、医療費の支払いもできそうにないので手術は断ろうと思っています。仕事も休めないし...。けど、本当は手術を受けたいんです。もう、痛くて限界です。」と話あり。健康保険に加入している患者であることから、高額療養費制度について情報提供した。併せて傷病手当金についても説明し、申請を勧めた。念のため、無料低額診療事業を実施しているリハビリテーション病院の情報提供ができるよう、準備をしておく。』

という記録がF-SOAIPだと、

F:
手術に伴う経済的負担の軽減
S:
「急に手術が必要だから、来週から入院といわれました。経済的安ゆとりもないですし、医療費の支払いもできそうにないので手術は断ろうと思っています。仕事も休めないですし...。けど、本当は手術を受けたいんです。もう痛くて限界です。」
O:
〇月〇日からの入院予定。
健康保険の被保険者。
A:
  • 医療費の支払い負担の軽減方法に併せ、休業中の経済的保障についての情報提供が必要ではないか。
  • 術後にリハビリテーションの継続が必要になる可能性が想定される。
I:
高額療養費制度と傷病手当金について説明。
P:
リハビリテーション病院への転院が必要になった場合に備え、無料低額診療事業を実施している医療機関をリストアップし、情報提供できるよう用意しておく。

となります。

研究ではこのF-SOAIPで記録を書くことに「書き手の相手を観察する力」、「自ら考える力の向上」、「多職種との連携を促進させる効果」があることが明らかになりました。

また、F-SOAIPで記録を書くということが、面接に臨む姿勢にも変化を与えていることが明らかになっています。これらのことから、研究成果を面接と記録を一体的に学ぶ教育プログラムの体系化につなげられると考えています。

今後は、今の研究を通して医療と福祉の記録の標準化について取り組むことで、記録の書き方で悩む人を少しでも減らすことができればと考えています。また、せっかく書いた記録が活用されない現状があるため、記録を有効活用する方法の具体的な提案を行っていきたいです。

高校生の皆さんへ

社会福祉、ソーシャルワークの学びは、皆さん自身や、皆さんの大切な人たちがいきいきと自分らしく暮らすことを支えてくれます。ぜひ国際医療福祉大学で一緒に学びませんか?

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医療福祉コース

髙石たかいし 麗理湖まりこ
専門分野:
保健医療ソーシャルワーク、ソーシャルワーク、ソーシャルワーク記録、ソーシャルワーク記録教育
担当科目:
保健医療と福祉、保健医療福祉制度論、医療ソーシャルワーク論など